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あたらしい戦略の教科書

 いわゆる戦略論というと、クラウゼヴィッツの戦争論が有名だが、原文は非常に読みづらいものらしい。これを素人にわかりやすく解説してくれたのが「図解 クラウゼヴィッツ「戦争論」入門」で、「企業マネージメントにも通じる」というのが売り文句なのだが、本当に仕事に役に立つかというと、ビジネスと戦争とは直結しにくい点も多いのも確か。
 ビジネス戦略を、より実務に通じる方向からアプローチし、これぞっというくらい簡潔にまとめてくれているのが「あたらしい戦略の教科書」である。
 これまでのビジネス書のほとんどが戦略立案に重点を置いているのに対して、本書で一番感心するのは、その戦略の実行をいかに成功させるか、まで突っ込んでいるところだ。これを主張できるのは、実際にビジネスの場で戦った人だけである。学者やコンサルはビジネス戦略を一般化したり、その最新の手法を紹介することはできても、具体的に会社の中でどう動いたらよいかまでは教えてくれない。
 特に、
『戦略の成功には、周囲の多くの人を説得することが欠かせない』とか、『戦略チームはトップを巻き込み、戦略は「お墨付き」であるという状態を確保する必要がある』といったフレーズは、戦う相手には他社やユーザだけでなく「内なる敵」が含まれており、しかもその方が重要であることを、包み隠さず主張してくれている。
 ビジネスの場(会社の内外)は、過去の戦争と理屈でつながっているだけではなく、やはり生きている戦場なんだと実感させてくれる一冊である。