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Project Palm読後感想:PalmPilotの記憶

 モバイル端末で本がさくさく読める時代になりましたねぇ。iPhoneのディスプレイ、フォント、さらにそのドライバの出来はなかなかよく、その物理的なスペックよりもはるかに文章が読みやすく感じます。iPadだと写真入りの雑誌を読むのもストレスがなくなりそうですねぇ。
 さて、App Storeでもガンガン売れまくった電子書籍Project Palm 1をようやく読み終わりました。感想と言うのもおこがましいのですが、そこにあるのは作者である機長のPalmへの溢れんばかりの愛情に尽きます。さらにはノンフィクションの形式を取っていながら、そこで起こるイベント1つ1つにPalmコミュニティの人々の想いが載っています。多少、行き過ぎの感もありますが、そこがまたリアル感があっていいんですよ。
 とはいえ、そういう情緒的な表現を割り引いて読むと(別に割り引かなくてもいいんですが)、実は普通のビジネス書としてもなかなか見ごたえがあります。ベンチャーの成功条件や、企業の成長の過程で起きる問題、ある分水嶺での判断基準などは、日本のベンチャーにとっても共通のものです。一つ例を挙げるとすれば、Graffitiを切り売りする件などは、開発型ベンチャーが見落としがちなキャッシュフローの問題を如実に示しています。
PalmPilot
 と、まぁ、適当に言葉を並べた感想はともあれ、読後感極まって、押し入れにしまったままのU.S. Robotics謹製のPalmPilot Professional(SuperPilot)を引きずり出してきました。単4電池を入れますと、今でもきちんと動いちゃいます。iPhoneのカメラ写真では分かりにくいですが、ちゃんとLEDバックライトもつきます。イケショップさんの1997年7月22日付けの領収書とともに、J-OS Proとセットでマニュアル類も全部出てきました。あとはどこかに貼ったグラフィティのシールと、箱さえあれば購入したままの完動キットです。ロブ灰谷氏写真入りのアクセサリー・カタログ付きです。うーん、この手触りの武骨なチープさが何とも言えず最高です。
 PalmPilotで一番の思い出は、米国出張のときのデトロイトからサウスベンドに向かうローカル線の飛行機の中でのエピソード。1998年7月22日(PalmPilotの購入1周年記念なんだね)、飛行機が前日の嵐で2時間遅れたので、狭い機中で予定の組み直しと出張報告書を書くために、PalmPilotをちょこちょこいじっていますと、隣に座ってたいかにもアメリカ人って風のでかいオッチャンがのぞき込んできて、「それ、どこの製品?」と聞いてきました。反射的にPalmPilotに刻印されたロゴを指さして「U.S. Robotics」と答えましたら、なんか妙に感心した様子でフンフン言った後、隣に座ってたとっても品のいい感じの少し年のいったレディ(奥さん?同僚?秘書?)に「おい、あれ、U.S. Robotics製だってよ」と話しかけてました。U.S. Roboticsってモデムメーカですからねぇ、信じられんわなぁ。まぁ、実はそれだけの事なんですが、アメリカにもやっぱPDAオタクっているんだなぁ、と変な方向に考えが行っておりました。
 こういうエピソードが日付つきで思い出せるのも、今考えれば
HotSyncのおかげ。Mac OS XとiPhoneには1997年からのスケジュールがすべて入っています。アナログな思い出もデジタルと共にあり、てな感じでしょうか。
 …というわけで、特にオチもなく、当然、続編の
Project Palm 2も引き続き行きます。

PalmPilot J-OSキット
<大掃除では常に存亡の危機にあるPalmPilot ProfessionalのJ-OS Proキット>

排出権商人

 久々に日本製の小説らしい小説を読んでみた。
 「排出権商人」は、今もっとも熱い二酸化炭素排出削減ビジネスのお話。ここではあえて温室効果ガスとは言わないでおこう。
 舞台となるのはまさにCOP15開催直前くらいまでの「現在」なので、世界で何が起こっているかのお勉強には最適である。マスコミ(最近はマスゴミか)では言葉だけしか出てこない、「排出権取引」や「CDM」といったビジネスの実態が描かれている。風力発電や炭坑メタン回収を手がける怪しげな事業者、商社、それに輪をかけてさらに怪しいカラ売り屋の暗躍などをきちんと人物を登場させることで、無味乾燥なビジネス用語に、姿形を持たせることに成功している…と思う。多分、実際のビジネスの現場に同行取材したのか、あるいは現場の人間を相当徹底的にインタビューしたのだろう。
 と、いうことなのだけれども、本書はあくまで「ビジネス書」と割り切って読まれることをお勧めする。「小説」として読んだら、大したオチもないし、盛り上がるイベントもない。感動するお話でもなく、すっきりするお話でもない。伏線と思っていたものは全部放置したままで終わってしまう。一番最後の「オチ」を評価する人が多いようだけれど、今さら分かり切ったお話だし。やっぱり日本の小説はダメだねぇ。
 地球温暖化ビジネスの小説として圧倒的に面白いのは今は亡きマイケル・クライトンの「恐怖の存在(State of Fear)」だ。ビジネスの現場を単に形だけ小説にするだけでなく、想像や思考をふくらませて「ひょっとしたら将来こういうことが起こるかも知れない」世界を独創的に描き切っている。
 二酸化炭素削減はビジネスになるので、どんどん進めていくんだけれど、個人的には地球温暖化防止とか、地球に優しくとか、お題目を唱えるだけの感傷的な活動はまっぴらごめん。「地球温暖化」が正しいかどうか知らないが、ぼったくられないようにするだけの知識と知恵は備えておくべきだろうねぇ。

バチカンの素顔

 バチカンは、言わずとしれたダン・ブラウン著の「天使と悪魔」の舞台で、ローマ・カトリックの総本山で、世界一の小国で、一国丸ごと世界遺産の国である。このバチカンをナショナルジオグラフィックならではの美しい写真で紹介した新刊が「バチカンの素顔」である。
 ナショジオの記者が1991年に1年間かけて写真取材したものを元に編集されており、今回は「天使と悪魔」ブームに合わせての発刊だろうか。当時の教皇はヨハネ・パウロ2世であり、何度も写真に登場する。ただし、全7章のうち最後の1章は2005年に選出されたベネディクト16世関連の章となっている。情報が古いと言えばそうなのかもしれないが、そもそも使徒ペトロの墓所とされる教会堂などは築後1600年以上。10年程度の変化など誤差の範囲。それよりも、分厚いカラー上質紙250ページのボリュームに、150ページ以上のフルカラー写真で、定価2,800円はお買い得ではなかろうか。重さはずっしりくるのだが、中身はそれ以上に歴史の重さがずっしり詰まっており、圧倒的でさえある。
 「天使と悪魔」は小説だけだと、その舞台となる建物や美術品(と呼ぶべきか?)などの基本的な知識がないと、文章だけではビジュアライズが困難。言ってみれば、小説で世界遺産の観光案内しているようなもんだからねぇ。映画だと分かりやすいのかもしれないが、今度はおそらく推理やストーリを追えなくなるだろう。「読んでから観るか、観てから読むか」とよく言うが、この「バチカンの素顔」を、小説と合わせて読む(観る)と、イルミナティの世界もとい、カトリックの世界にどっぷりと浸れること請け合いである。

愛に時間を 〜 涼宮ハルヒの憂鬱

 突然オンエアされたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の新作「笹の葉ラプソディ」。その中で長門有希がさりげなく読んでいたのが、ロバート・A・ハインラインの「愛に時間をである。本書はタイムトラベルの伏線となっている。ちなみに、長門が読んでいたのはハードカバー本であったが、リンク先は3冊に分かれた文庫本の1巻目である。思わず「懐かしい〜」と叫んでしまったのも当然。読んだのは昭和59年の初版本で、もう25年近くも前のこと。まさに「愛に時間を」。
 ハインラインと言えばパワードスーツを扱った「
宇宙の戦士」が有名(実はスタジオぬえのイラストの方が有名かもしれないが…)。本書にはベトナム戦争や愛国主義を彷彿とさせる表現が随所に見受けられ、かなり右寄りの作者というイメージを持っていたので、「愛に時間を」の発刊当時はマジでひっくり返った。内容は、長寿族であるラザルス・ロングの長い、長い、飽きるほど長いお話。予備知識を持たずに読み始めたので、話がどこに向かうのか分からなくなって途中で挫折しそうになったが、最後は本当に心温まる感動の結末を迎える。
 タイムトラベルを描いたハインライン作品は、「愛に時間を」を遡ること30年以上前に書かれた「
メトセラの子ら」や「夏への扉」など、とてもロマンティックで感動的である。これらの古典SFを読んでしまった後では、正直、最近のタイムトラベルを扱った作品はなかなか楽しめない。
 ところで、オンエアされた「笹の葉ラプソディ」の原作は「
涼宮ハルヒの退屈」で、「涼宮ハルヒの〜」シリーズはこの話を機に、ややこしいタイムトラベル・ループに突入する。ハルヒシリーズはSF小説好きにはたまらない話が多いけれど、アニメシリーズもその辺を分かって作っている辺りが、さすが京都アニメーションというべきか。

あたらしい戦略の教科書

 いわゆる戦略論というと、クラウゼヴィッツの戦争論が有名だが、原文は非常に読みづらいものらしい。これを素人にわかりやすく解説してくれたのが「図解 クラウゼヴィッツ「戦争論」入門」で、「企業マネージメントにも通じる」というのが売り文句なのだが、本当に仕事に役に立つかというと、ビジネスと戦争とは直結しにくい点も多いのも確か。
 ビジネス戦略を、より実務に通じる方向からアプローチし、これぞっというくらい簡潔にまとめてくれているのが「あたらしい戦略の教科書」である。
 これまでのビジネス書のほとんどが戦略立案に重点を置いているのに対して、本書で一番感心するのは、その戦略の実行をいかに成功させるか、まで突っ込んでいるところだ。これを主張できるのは、実際にビジネスの場で戦った人だけである。学者やコンサルはビジネス戦略を一般化したり、その最新の手法を紹介することはできても、具体的に会社の中でどう動いたらよいかまでは教えてくれない。
 特に、
『戦略の成功には、周囲の多くの人を説得することが欠かせない』とか、『戦略チームはトップを巻き込み、戦略は「お墨付き」であるという状態を確保する必要がある』といったフレーズは、戦う相手には他社やユーザだけでなく「内なる敵」が含まれており、しかもその方が重要であることを、包み隠さず主張してくれている。
 ビジネスの場(会社の内外)は、過去の戦争と理屈でつながっているだけではなく、やはり生きている戦場なんだと実感させてくれる一冊である。

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